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アイカツ、「+1」、夜空先輩の歌について(アイカツスターズ!)

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(アイカツスターズ!ミュージックビデオ『Summer Tears Diary』をお届け♪)

 

 正直に言ってしまうと、アイカツシリーズの歴史の中ではフレンズはキャラクターの歌唱面においては他に類を見ない程クオリティが高く、そのクオリティは声優さんに声だけでなく歌唱も任せるという方針によって成立しているのは火を見るより明らかです。そんな中でアイカツ無印とスターズにおいて見るべき歌い手がいるとしたら、筆者は真昼ちゃん、ついで夜空先輩、そしてリリィ先輩の名前を真っ先に挙げると思います。今回はそんな夜空先輩の歌にフォーカスしてみようと思います。

 夜空先輩の歌い手としての特徴は、何よりも艶のある魅力的な声です。真昼ちゃんのような高音域の自由度はない代わりに、ミックス気味の声で幅広い音域を安定した歌にするスペシャリストです。広がりのあるミックス特有の甘さが歌唱技術的な部分に蓋をしていると言える部分もありますが、まあロックのような切れ味のある歌唱を求めなければさほど大きな問題にはならないでしょうし、実際に夜空先輩はそうした能力を求められる楽曲を歌唱していません。この辺りはロッカーを志向している(?)であろうのに発声にやや甘さがあり、作中の設定と実際にできる音楽との間にミスマッチがある桜庭ローラとの大きな違いなのではないかなと思います。

 Summer Tears Diary、Makeover Makeupあたりを聞いてもらえば分かりやすいかもですが、実際夜空先輩のパートが含まれる歌はリズミカルというよりかは、余裕があって分かりやすいリズムの上にメロディーが乗っかっているようなものばかりです。ですから彼女の歌は破綻せずに曲の中に納まることが出来ています。この辺りには作編曲からの歌い手への歩み寄りを垣間見ることが出来ますね。逆に言えば、この歌い手に細かく刻ませる歌を歌わせるといともたやすく崩れると思います。まあ、そんな歌は作中登場しませんでしたのでどうだっていい事なのですが。

 また、使える音域も一般的な歌い手に比べると狭く、豊かな声質を維持することと引き換えにややピーキーな性質を持つ歌い手になってしまっている面もあります。個人的にはこの辺りの「弱さ」を真昼ちゃんなど他の歌い手とのユニットの魔法でカバーしているのがアイカツの音楽の神髄なのかなという気がします。

 

 中音域メインのピーキーさというのは、声を作って歌う以上当然のごとく現れる、歌い手個人の努力ではどうすることも出来ない部分なのですが、少なくとも夜空先輩の場合はそうした部分への作編曲からの配慮がちゃんと成り立っています。ボーカル音楽における一流の作編曲家の条件の一つとして、歌い手に出来ないことをやらせない、ということが挙げられると思うのですが、少なくとも夜空先輩の場合は夜空先輩に出来ないことは一切やらされていません。アイドルものの企画では、キャラクターの設定や声優、歌い手選びの段階で歌に造詣のない人間の関与があり楽曲として破綻してしまっている音楽が良くあります。最近この市場において覇権を固持しつつある某アイドルユニット企画とか某バンド企画とかでも、そうした壊れた音楽はよく耳にするものです。

 スターズにおける夜空先輩の歌は、恵まれた個性の上に、作編曲の匠たちの技が重なって、きちんと「意図の分かる音楽」になっています。これはさりげなくなるようになっているように見えて、実は様々な役割を負った人々の弛まぬ努力の結晶なのです。

 

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