試しにアニソンを聞いてみる。

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雑記:オタクカルチャーから派生する音楽に顧客が本当に期待しているものとは

 以前言及した通り、私は現代的なメジャーポピュラーミュージックシーン(例えばJPOPのような)においては、その歌い手からいい音源が取れるという確信さえあれば、歌い手の技術というのはとりあえず窓から放り投げてもいいものだと思っています。何を隠そう、音源の出来不出来を左右する最大のポイントは歌手の技量ではないからです。問題は、その歌手に合った作編曲が与えられ、エンジニアが適切な仕事をするかということです。

 

 しかるに、メジャーポピュラーミュージックシーンにおいては、この歌手にこの作曲、編曲はミスマッチじゃないの……? というものはほぼ見かけることがありません。それを見かける機会があるとしたら、それはオタクカルチャーから派生したものです。

 

 そこの差というのはどうして生じているのか。勿論、市場の作り手(カスタマーとコンテンツの作りて双方)の作って来た今までの歴史が、顧客がオタクカルチャーの音楽に求める第一義的なものを「クオリティ」ではなくしている、というやや後ろ向きな解答もあり得ると思います。それはそういう文化論を専門に研究している人ですら分からないところのある部分だと思うのですが、個人的にはオタクカルチャーに求められる音楽と、メジャーミュージックシーンに求められる音楽の間に決定的な差は「ない」と思っています。にもかかわらずどうしてオタクカルチャーから派生する音楽には(厳しい言い方をすると)粗のあるものが存在するのかというと、作り手のマインドセットの問題だと思っています。こういうものが受けるんだろ? という体で、わざと素人感を出したものが流通したりしている現状こそ、本当は粗のない音源を求めている顧客と、粗のある音源だから受けると思っている作り手の間にあるディスコミュニケーションなのだと思います。

 

 そもそも粗のない音楽とは何なのか。色々な言語化の方法があると思っていますが、個人的には以前の記事で書いた、「特定の楽曲を適切な方法で歌い手さんに歌わせたときに出る最高のクオリティを、様々な歌い手さんで試してみて、クオリティ×人数の数式であらわしたもの」(縦軸にクオリティを、横軸に歌い手さんを取って、クオリティを歌い手さんで積分した時の「面積」、と言ってもいいです)が大きい音楽だと思っています。例えばソロアーティストの場合、楽曲はその人だけがその人だけの方法で歌えばいいわけです。対してアイドルユニット(二次元三次元関わらず)に歌わせるような音楽の場合、一人一人に最適化した音楽を作ることは不可能です。到底一貫性のある音楽にはならないでしょう。だから、誰が歌ってもそこそこのクオリティになる+数の力や思い出補正、という状態になる訳ですね。

 この価値基準を元に、現在のオタクカルチャーから派生する大半の音楽を分析すると、残念ながらこの歌手×クオリティの「面積」が大きくない歌が散見されます。そして、その課題を解決することが出来れば、オタクカルチャーの中の音楽はより一層輝きを増すと個人的には思っています。僕に出来ることは限られていますが、自分もそれに携わるようなことが出来たらそれが一番幸せなことですね。

 この件に関しては、後日もうちょっと深堀した記事を書こうかと思います。それでは今回なこんなところで。

ガルパを履修すべきか否か:カバー楽曲をざっくり聞いた印象

 このブログでは主にオタクカルチャー絡みの歌についてのあれこれを書き綴っていますが、そろそろネタが無くなって来たというのもあって、最近更新ペースが遅くなってきているのも事実で……まあいろいろな事情で意図的に触れてこなかったコンテンツもたくさんあるわけですが、そんないろいろな事情で触れてこなかったコンテンツの中でも一際迫力があるのがガルパです。

 ウィキペディア先生のガルパのページによると「BanG Dream!プロジェクト全体のプロモーションは本作(ガルパ)が中心となっている」とのことで、バンドリというコンテンツ、履修するならガルパから入ろうかなと思ってます。

 そんなわけで一通り取っ付きやすそうなカバー楽曲の中から気になるものを聞いてきましたので、曲ごとにレビューしていこうと思います。

 

・光るなら

 様々な音域をバランスよくつかわされる楽曲で、譜面通りに歌うこと以上に楽曲として完成させることの難易度が非常に高い曲です。カラオケ史観的には高い音域が出せる人は偉い、的な思想が根強くあるようですが、こういう歌を聞けば歌にするということの奥深さはそればかりというわけではないことがよく分かると思います。

 で、バンドはPoppin'Partyですね。まずAメロBメロを聞いてわかるのが、低~中音域の弱さです。作られた声にはよくあることなのですが、この発声でこうした歌はちょっと難しい部分があるような……全体的にもうちょっと密度のある声が聞きたいものです。サビとCメロの仕上がりはいいと思います。

・千本桜

 これ凄くよく出来ますねー。普通の歌い手からしてみるとこの楽曲は高音域メインで、特にサビで非常にピーキーな裏声と地声の出し入れを要求される、音程的にかなり厳しいところのある曲なのですが、高い声に強みのある歌い手なのか、サビも全て完全な裏声になることなく一息に歌いきってその課題を解決しています。また、一番聞き映えする音域をメインに持ってきていることで、か細い印象もほぼないです。

 また、この楽曲はボカロ曲の多分に漏れずリズム的に非常に平易で、それがこの楽曲を分かりやすくしている最大のポイントだと思います。

 

・Redo

 これもよく出来てます。ポイントを上げるとするならサビの前で音程がやや不確かなところと裏声に厳しさがあるところだと思いますが、そこを除けばアニソンとしてはほぼ問題ないと思います。歌手のいい音域がふんだんに使われており、ダイナミクスを感じることが出来ます。

・ロストワンの号哭

 これもまたよく出来ています。リズム、音程ともに平易なところにリズミカルな歌詞が乗っかっていて非常に格好いいです。サビのやたら高い音も力強く声になっていますし、元々譜面通りに形にさえ出来れば(それが若干難しいものの)歌にするのも簡単な楽曲とは言え、この仕上がりなら特に文句のつけようがないと思います。

 

・secret base~君がくれたもの~

 これまたリズム、音程共に非常に平易な楽曲です。そして、声優音楽的なものとして聞けば比較的スムーズに声が出てます。強いて挙げれば声が作られているが故に滑舌が甘いのと、ファルセットが聞き苦しいかな……と思いますが、別にそれが聞こえ方に大きな影響を与えていると言うほどではないと思います。それにしてもこの曲、全日本で何回カヴァーされているのでしょうね?

・世界は恋に満ちている

 もともとサビのフレーズがすんなり歌えるかどうか勝負なところのあるこの楽曲。恐らく声を作るように言われてこの出来なのだと思うのですが……うーん……致命的な所としてはやはり開幕とサビのフレーズの音程の取られ方が極めて甘いです。偶々音程のセンターがあっているだけなのか、それともそれすらも合っていないのか……少なくとも音の出だしに近い所から正しい音に入ってそのまま抜けて行くということは全くできていません。今回挙げた中では一番課題点が多かった楽曲かなと思います。

 

・ETERNAL BLAZE

 カラオケ史観的な下馬評がどうだかわかりませんが、歌にするという事についていうならこの楽曲は比較的平易です。

 元曲がちょっと歌謡曲みたいな歌われ方をしているのに対して、Roseliaによるカバーでは非常に歯切れよくロックテイストにまとまっています。強いて言うならCメロが苦しいかという感じがするものの、それ以外は小さく綺麗にまとまっていて十分評価するに値する出来だと思います。

・シャルル

 リズム的には譜面通りに歌うだけなら「とりあえず」平易なので、後はメロディーに出来るかどうかというところなのですが……結論から言うとこの音源はまあまあ良くまとまっていると思います。ファルセットが苦しく、またそれもちょっと発声を見直せば改善できるところなのではないか? という気がするものの、まあこの楽曲の構成上ファルセットが苦しいのもある程度仕方がないところがあると思います。それにしても……ライブ風音源なのか、若干音の解像度が低い気がするのが気になると言えば気になります。

 

 

・GO! GO! MANIAC

  これも作られた声の典型的な特徴として、何と言うかふにゃふにゃしてますね……。うーん、こうしたものを受容してこそ現代的なオタクカルチャーなのでしょうか?

・いーあるふぁんくらぶ

 これも歌唱にはごーまにと似たような特徴はあるのですが、楽曲としての出来の良さはけた違いだと思います。そんなに発声の力を試されない楽曲、作られた声により歌唱に出せる表情にも制約がかかる中で見事に一貫性のある音源になっていると思います。多分カバーでこのバンドからこれ以上の出来のボーカル楽曲を取り出すのは難しいのではないかな、と思います。個人的にはこれはクリティカルヒットだと思います。

 

  全体像としては、思ったよりしっかりボーカル曲してんなって印象でした。歌の力が一番あるメンバーのいるバンドがどれかというのが作中で明示されているのか分かりませんが(多分Roseliaが上手い設定なのかな?)、個人的には歌を聞く限りどのバンドも他のバンドに対して大きな優位を取れるほど抜きんでてはいない気はします。

 あと、楽曲を探していて思ったのは、とにかく数が膨大だという事です。これだけ歌っていたらあたり外れは(ないに越したことありませんし、実際にメジャーのポピュラーミュージックシーンで活躍するような歌い手の場合、歌の実力とは無関係にボーカル的に聞いてこれは違うだろうという楽曲はないものですが、)まああってもしかたないでしょう。

 二次元オタクコンテンツですから、可愛いというところが評価の一番の基準になるのは自然なことですが、同時に歌ものである以上は歌としてどうなのか、または楽器の演奏がどうなのか、という部分は抜きにしては語れない面もあるのが事実でしょう。然るに、そうしたことをしてもぼろくそいうだけみたいなことにはならなそうだなという事が判明したので、売り上げやアクティブユーザーの規模という点から言っても、次に履修すべきコンテンツはこれなのかなという気がしています。

 それでは今回はこんなところで。