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『お願いアインシュタイン』に感じること。

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 皆さまは『お願いアインシュタイン』という楽曲をご存知でしょうか? 多分知っているよという方はごくごく稀なのではないかと思います。ビートマニアというゲームの中に収録されている楽曲です。

 さて、このブログでは執拗にボーカル楽曲の「歌詞」に言及するという事を避けて来ました。これは実は、あくまでボーカル曲の核は歌詞ではないということを暗に示したかったということが一番大きな目的であったのですが……というのも、メロディーをはじめとする楽曲の構成には寸分たがわず「ストーリー」が存在し、それは歌詞と同期したりしていなかったりするのですが、それとは別に歌詞の側からストーリーを掘り下げていくというやり方では普通満足のいく歌唱は成立しません。なぜならばそのやり方は、メロディーから来るストーリーを無視しているからです。逆に、不思議なことに歌詞ではなくメロディーから曲中のストーリーを理解していくというやり方は大体うまくいくものなのです。

 そして歌い側ではなく聞く側の立場からしてみてもこの法則性に乱れはなく、多くの場合楽曲の構成から来るストーリーへの理解がない限り、歌詞考察はうわべをなぞるだけの存在に過ぎません。それが好きだという方もいらっしゃることと思いますし、詩を楽しむ要領でいけばそれはそれで一つの完結した世界を作ることは出来るのかもしれませんが、果たしてそれは音楽を聞いていると言えるのか? というと個人的には微妙な問題だと思います。

 で、今回何をするのかというと、なんとその「歌詞考察」をしたいと思います。意味が分からないと思われた方もいらっしゃると思いますが、別に筆者は歌詞考察の意義を棄損したいわけではなく、ただ単純に音楽性を理解できないのに歌詞にこだわる理由ってあるの? というところを突き詰めたかっただけです。音楽性を理解したうえでする歌詞考察であれば別にそれはそれで有意義だと思うわけです。そんなわけで、今回の課題曲である『お願いアインシュタイン』を見ていきましょう。まずは曲名でググって歌詞を探してきてください。(音源は上のリンクで聞いてもらうか、適当なところで探して下さい。探せばもうちょっと綺麗な音源があります)

 

 さてさて、この曲なのですが、最大の謎は、何を歌った歌なのか? ということだと思います。「光年」という単語もなんとなく誤用である気がします。なんというか、ここで距離の概念が出てくるためにはあまりに脈絡がなすぎると言うか……。

 ただ、仮にこの光年が誤用であって、この歌の中で時間を示す言葉として使われているとしても、何とはなしに意味が分からないわけではないと思います。

 

目隠しした僕らで 同じ名前を奪い合おう
何光年前と
同じ惑星の下で

 

 この一連の文脈から、この歌は僕ら、つまり僕と君という二者間の関係性を歌った歌である可能性がかなり強くなると思います。(これはこの後の歌詞に「キミ」という単数形の言葉が出て来ることからもより明らかになると言えると思います)

 このとき、僕と君が同一時空上の存在でないとしたら、同じ星の下で同じ名前を奪い合うという言葉との整合性が今一付きづらいので、僕と君とは同一時空上の存在であるということは仮定してもよい気がします。この時点で確実に言えるのは、僕と君とが別個にアイデンティファイされた同一時空線上の2人格であるということです。

 

キミにとっての暗い海は
僕にとっては空気みたいだ
小さなコツで 空の青さになる

 

 ロマンチックな一節ですが、論理的には何の新情報もありません。より厳密に言えば、君にとって「暗い海」が存在することが論理的にいかほどの意味を持っているか謎です。ただ、「暗い」という歌詞が入ることをメロディーラインを考えた人が最初から想定していたとは思い難い部分はあり、この狭くリズム的に整った箇所に、敢えて「暗い」という単語を入れて来たことは気に留めておくべきかもしれません。

 

大事なことほど 許せないスキが 夜に噛まれて恋になる
このカサブタ 固まる前に 想像のプールに沈めた夢は

 

 先に出て来た「暗い海」そしてこのフレーズの「夜」という単語を、文脈から宇宙を示す単語として仮定すると、最初に引用した同じ星の下で、等の言葉の意味が大分通りやすくなると思います。この瞬間からこのブログにおける『お願いアインシュタイン』は宇宙における「君と僕」の関係を歌った歌になりました。

 

生まれ変わって
コトバの無重力 触れたい キミだけの海の底
人類最後の二人になって
孤独のりんごを暴こう

フシギだね 全てが欲しくなる
わかりきった嘘も 言い訳も 蹴っ飛ばせ
宇宙で 最初の 秘密にキスしてよ、お願い。

 

 うん、本当に、まるで意味が分からん。

 抽象的なレベルで言えるのは、「人類最後の二人」「宇宙で最初の秘密」といったワードから、この曲では時間という軸を大雑把にすっ飛ばした無茶苦茶デカいスケールで物語が展開されているという事でしょうか。

 で、題名に立ち返って見ると、お願いアインシュタイン、とあります。

 筆者は物理学に何も明るいわけではありませんが、アインシュタインと言えば特殊・一般相対性理論を提唱した人物としてよく知られていますね。で、この歌と相対性理論の接点があるとすると「時空」の扱いだと思います。これを筆者風に再解釈するなら、「時空を超えさせてよ」みたいな感じでしょうか。

 さて、以下は、あくまで筆者が「歌詞に意味を強引にこじつけるなら」の話です。題材が題材なのでかなり雑にスピリチュアルな話になりますが……。『時間をすっ飛ばせるほどの二人の関係性は、同じ星の下で一つになり、果て無き宇宙はまるでそれが空のように見えることもあります。その中で、好きという思いが恋に変わっていき、その想いが傷を抱えたまま心の中に滞るまえに、もう一度自分と真剣に向き合うことにします。すると、その想いというのは到底言葉にしきれないものであることに気が付きます。二人だけでどんなことでも出来そうな気がしてきますし、実際にそれをやってみたいという思いに駆られてきます。』みたいな感じですかね?

 とまあ、筆者の見解ではこれは普通の恋の歌になりますね。片思いの歌なのか両想いの歌なのかも解釈が分かれるところだと思いますが、筆者はこの物語の主人公の希望的観測を述べただけの片思いの歌なんじゃないかと思っています。そう思うと、言葉遊びがflamingoなみに凄いので何かとんでもないことを言っているような気がしてきますが、主張の内容自体は、恋しちゃってんだー 君は気付いてないでしょー♪と同じレベルな気がします。

 まあしかし、歌詞というのは具体的に意味が分かるかどうかという以前に、如何に歌に乗っかっているか、そして如何に歌い手や聞き手に想像の余地を与えるか(もっと言えば、如何に抽象的理解を広げつつ具体的理解を狭めるか)が重要だと思っています。その意味でこの歌詞は、若干一貫した抽象化された理解に行きつきづらいたどたどしさがある分歌になりにくい気がするものの、トータルで見るとそこそこ出来がいいんじゃないかなというのが筆者の考えです。切りもいいので、今回はこんなところで。