レジェンヌのOPにもなっている当楽曲ですが、聞き手が感じる以上に難しさがあり、ただメロディー通りに歌うだけだと棒読みならぬ棒歌いになりかねない、音源にするために高度な技術が必要な楽曲でもあります。変則的なリズムの中に、例えるなら、歌い手の持つ世界の広さと器用さを高水準で両立させることを要求されるような楽曲になっているかと思います。今後予科生の歌唱ももしかしたら聞ける機会があるのかもしれませんが(まあないかもしれませんが……)、凪緒ちゃん、ましろちゃんあたりの歌唱は是非とも聞いてみたいですねー。特にましろちゃんの歌は卒がなく輪郭のはっきりしたいい歌唱になるのではないかと思います。それでは、曲の中身を見ていきましょう。
・建神百
非常に堅実で無難な仕上がりです。歌全体に一貫性があり、嘘臭さのない音源になっているのもとても素晴らしいと思います。ただ、無難なんですが、サビでは無難さゆえの地味さみたいなものを感じないわけではないですかねー。個人的には冒頭の4拍子のフレーズはこの三人の中で一番好みなんですが……んー……サビのフレーズでより緩急や歌の表情といったものを出せれば、また違う仕上がりになると思うのですが……(……これに関してだけは、プロの歌い手さん相手にどう言葉を選んでも少なからず上から目線な表現になっちゃいますねー。。。。。。筆者の筆の力が至らないせいだと思うのですが…)
・北咲彪凛
大胆に艶のあるファルセットを使ったダイナミックな仕上がりになっています。とても広がりのある声を伴った歌唱になっていて、サビに入る前の4拍子のフレーズは3人の中であやりんが一番潜在性に溢れているのではないかと個人的には思います(何より
・紗曲なな瀬
相変わらず喚声点を器用に行き来する聞いていてとても難しいところのある歌唱になっていると思うのですが(特に出だしからファルセットで入るところが初見では面くらいました)、サビ部分の完成度に関して言うなら三名の中では今のところずば抜けていると思います。特に「ビースター Be a star ビースター」のフレーズが簡明かつ卓越した完成度を誇っていて、このフレーズが3人の中で一番形になっているのは七瀬さんの歌唱なのではないかと思います。(藤咲さん、百千さんを
以前の記事の中で七瀬さんの歌を「個性」とざっくばらんに表現させていただきましたが、個人的にはどちらかというと七瀬さんの歌を聞いていると、個性的で斬新というよりは、割合王道に近い技術の中で極めて高い目標を持っていて、その中で歌に表現を出しているという方がしっくり来るような気がしています。派手派手しく聞こえやすいですが、テクニック的には歌い手がよく学ぶような知識を非常に高い水準で活用した、とてもまとまりのある歌になっているんじゃないかと聞いていて思いました。独自の世界を持っているという意味ではそれを「個性」と呼ぶのもあながち間違いではないのかもしれませんが…まあ、色々と表現のしようはあると思うのですが、少なくともここまで綺麗に音源にされると、この楽曲の七瀬さんの歌唱の方向性には文句のつけようもないですねー。それぐらい素晴らしい歌唱です。
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リズムが取りにくいです……フルコン、パフェはカーテンコール、エクセに関して言えばDon’t think fell!!のほうが難しいかもしれませんが、何と言うか、音ゲーという比較的ファジーな媒体以外でこれを実演するのは凄く難しそうですね……。(音ゲーマー以外の方には馴染みのない表記だと思うのですが、全てのノーツでEXCELLENT以上の状態をエクセ、全てPERFECTの状態をパフェと呼ぶ習わしがあり、このゲームでも個人的にそれに従っています)
この楽曲の難易度が高い(音源になりにくい)原因として、三拍子と符点八分のシンコペーションの組み合わせというやや珍しい楽曲であることと、歌い方によってはアクセントの位置が隣接することがあげられると思います。三拍子の楽曲では一般的に強拍、弱拍、弱拍、の繰り返しで歌われるとされているのですが、この楽曲は歌詞の意味を考えると、この通りに歌うとやや寂しい仕上がりになると思います。特に歌の中で繰り返される/ビースター Be a star ビースター/のフレーズは、歌詞の意味を考えるとアクセント的には思い切って、ビースタッ Be a star ビースターぐらいの緩急の付け方で歌っていいと思います。(メロディーだけから考えるなら拍の頭の不定冠詞aの上にもアクセントがあっていい気がしますが……不定冠詞上にアクセントが乗るのは英語的にやや不自然なのと、Be a starというwordsの中でアクセントが隣接すると歌いづらくなるので、一般にはそこはさりげなく歌ったほうが無難じゃないかなと思います)最大の難所はbe a star とビースターの間でアクセントが連続するところで、このどうやってもアクセントが隣接してしまう箇所が皆さんとても苦戦しておられるように聞こえるのですが、七瀬さんの歌唱はここを非常に上手くまとめてあります。符点八分が特徴的な「スターになりなさい」のフレーズも同様にして、スターアになりーなーさーいーという具合に、アクセントのイメージとシンコペーションの組み合わせをかなり強く意識することが曲を「歌にする」上で重要ではないかと、個人的には聞いていて思いました。プロの指導者さんがこの歌を聞いたらどんな感想が来るんでしょうねー。ちょっと聞いてみたいところですね……。
鼻歌にするのは簡単でも、CDレベルで仕上げるのは非常に難しいといった感じの当楽曲なのですが、やはり本科生の実力をもってしても(というよりは本科生のような、規模が大きく歌にある程度の完成度の高さがあることを前提としたフォーマットの歌唱だからこそという部分が大いにあるのだと思いますが、)少し物足りなさを感じさせる部分もあったのではないかなと思います。まあ何度も繰り返し申し上げますが、これは曲が難しいです……それでは今回はこんなところで。
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