試しにアニソンを聞いてみる。

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beatmaniaIIDXとボーカル音楽との接点について

 歴史に詳しくない私が、無謀にも歴史を語ってみようと思います。

 そもそも音ゲーとは何ぞや? とか、音楽ゲーム全体の歴史を知りたい方は他のサイトの他の記事を当たってみることをお勧めします。

 

 BEMANIシリーズは、私の知る限り音ゲーの黎明期から現在に至るまでの長年にわたって音楽ゲームというジャンルを支えて来た、コナミのブランドです。最大の特徴は、キー音と呼ばれる、ノーツを押した際に楽曲を構成する音の一部が鳴るシステムの搭載にあると思います。(ただしボルテなどは除く)このシステムについてコナミは実はつい最近まで特許を持っていて、それ故にコナミ以外の制作した音楽ゲームはタップした際にクラップ音が鳴るのが一般的だったのですね。

 さて、beatmaniaIIDXやポップンミュージックなどはこのキー音の存在により、様々な恩恵を受ける傍ら、「音が鳴っているところにしかノーツを配置できない」「鳴っている以上の音の数の同時押しを配置できない」等の譜面上の拘束を受けることになります。また、その歴史の長さ故に、ゲームの高難易度化が進み、最近では楽曲自体が「早いテンポで」「複雑な音を叩かせる」ことを前提とした作りになってきています。早い話が、ボーカルという楽器でない音声が主役になるボーカル音楽との相性はそんなに良くないよということです。

 そもそもボーカル音楽において、余り裏で多重にピロピロやりすぎるのは好ましくありません。(ボーカルが埋もれてしまいます)従って、最近は16分の二重階段や二重乱打などがメインパートに配置されることも多いこれらのゲームにおいて、ボーカル音楽の譜面は、殆どの場合16分の単鍵+4分や、4分間隔でなくとも一定以上離れたリズムの同時押しという傾向になります。難易度を取るためにパーカッションの音が集中する箇所に同時押しやスクラッチを配置すると、どうしても4分のリズムが重い傾向の譜面ができるのです。これを私は勝手に「四角い譜面」と呼んでいます。

 ボーカルの扱いですが、IIDXにおいてはクラシック出身であり非常にフォーマルでフラットな歌を歌うJUNを擁するTERRAの抜けた穴がなかなか埋まらなかったように思えます。森永真由美が幅広いジャンルを請け負っていた時代もありましたが、正直空回り気味の歌も多かったなという印象です。他方、星野奏子は上野圭一とのコンビで〇〇仮面シリーズ、TatshとのコンビでSYNC-ANTHEM、YOSHITAKAとのコンビで月光等を歌ったりと、特定の作編曲者との組み合わせて安定的に活躍を見せていたほか、タイトルのコンセプトに合わせた楽曲を歌う等してファンを楽しませて来ました。星野奏子の退社前後から、ボーカル音楽とゲーム音楽のハイブリッドとしてSOUND HOLIC feat.高橋菜々の組み合わせでの外注が行われることが増え、さらに「聞ける」ボーカル曲が増えた他方で、個人的にはボーカル音楽との接点を結果的に同人音楽に絞ってしまうとなると今後の身の振り方に悪い影響が出かねないのでは? という感じがしていました。

 その後登場したのがみんな大好き、ニコニコ的な意味で言う「歌い手」のななひらです。あの歌い方は個人的にはそんなに好きではありませんが、少なくともかめりあとのタッグでボーカル的にもインスト的にも安定的にクオリティの高い楽曲を毎作供給するなど、今現在このゲームにおいて相応の存在感を示しています。

 過去の作品から特に優れたボーカル音楽を挙げるとするなら、個人的にはニーソ姫、Be a Hero!、SYNC-ANTHEM、Amor De Verãoを選びたいです。前二つの楽曲は基本的な構造が、ボーカルメインのパート+ボーカルの合間に細かい音を拾うパート、という作りになっています。その為ボーカルがより鮮明に聞こえ、単純にボーカル音楽として聞いたとき収まりがいいです。SYNC-ANTHEM、Amor De Verãoは少し毛色が違うものの、いずれもボーカルが鮮明かつボーカルトラックの出来が非常に良いと感じます。特にSYNC-ANTHEMは、この歌い手とこの曲からはこれ以上いい音源は取れないだろうと言えるようなエンジニアリングが聞いていてとてもわくわくとさせてくれます。

 最後に、IIDXのボーカル楽曲に今後の課題があるとしたら、それは「もう一人、技術のある歌い手を獲得すること」だと思っています。このゲームのボーカル曲は、王道と呼ばれるR&B的なボーカル音楽からは少しずつ遠ざかりつつあるのが現状なのではないかと思います。その中で、そうした楽曲を歌える歌手が一人加わるだけで、このゲームの在り方自体ががらりと変わるのではないでしょうか。それでは今回はこんなところで。