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歌手の話 やくしまるえつこ(ルル、少年よ我に帰れ、X次元へようこそ等)

※休日なので強引に記事をひねり出して更新してみました。

 

 そもそもやくしまるえつこは別にアニソン歌手ではない。しかしソロ名義でのCD7つの内6つがアニメとのタイアップになっているので、やや強引だがここで扱ってしまう。

 彼女が持つ技術は囁くことだ。常に喚声点付近の声を使い、息の多い声で地声と裏声の中間を取りに行く。ミックスボイスに近いような技術を利用して、非常にふんわりした声で音を取っている。だからオケが激しくなれば歌が壊れてしまうだろうし、彼女の曲はそうならないための工夫が沢山なされていていろいろと聞き所のあるものが多い。

 


やくしまるえつこメトロオーケストラ『少年よ我に帰れ』MV(short ver.)

 

 この記事作成時点で殆どの人にとって記憶に新しいのはノルニルと少年よ我に帰れだと思う。ともに回れピングドラムとのタイアップとして大ヒットしたし、あれがもう4年前だと思うと少し不思議な気分になるが、曲としては本来ベースやギターが入るところにストリングの比較的高い音が入ってきて似た役割をしているので、低音がドラム以外全体的にスカスカになっている。それによってやくしまるえつこの声は曲の中で消える事なくオケと併存できる。

 

 ボーカルについて言えば少年よ我に帰れは彼女の歌としては特段難しい。2番の後の変則パート後ではよく聞くと完全に息が上がっている。(これは本当の話なのでフルが聞ける人は是非確認してみて欲しい。)他を聞くとボーカル的に難しさのある歌は殆ど無い。

 やくしまるえつこはボーカル的に難しい歌を歌うタイプの歌手ではないし、シンプルなメロディーの中に一般的なボーカル性と違うレベルで表情を出していく歌手だというのは言わずもがなだが、少年よ我に帰れは普通のボーカル曲としての完成度を保ちながら、やくしまるえつこのそういう個性もよく活かされており、彼女にこのメロディーを歌わせるのならこのパッケージングしかないといった絶妙な編曲になっている。この曲でオケをもうちょっと豪勢にして正統派の歌手に歌わせてもきっとうまくいくに違いないだろうというボーカル音楽的な潜在性が高い曲構成の中で、やくしまるえつこの魅力が壊されずにちゃんと曲に収まっているのは聞いていてワクワクする。

 

 編曲について更に言及すると、低音を抜いてあり歌手の声がくっきりとしているのは勿論、オブリガートが印象的な管楽器や、オケの主役と言える程目立っているのにシンプルでしつこさのない弦楽器など、歌手のいるところでは全体を少し底上げし、歌手のいないところでは派手に底上げすることで歌手を活かしつつ曲を盛り上げる作りになっている。さらにラストのサビではベース音が加わることで低音付近を若干盛ってある。

 

※※※                                            ※※※

 

 この歌手をタイアップから語るならルルは外せないんじゃないかと思う。こういう囁く曲はアニメソングとしての派手さが求められるタイアップの中ではそんなに多いわけではないし、この曲も相対性理論の曲とは少し違うマーチのような盛り上げ方をしてある。(世の中に多い四拍子の曲は強//中強/弱と拍の頭が四回に一回来るのに対して、マーチは二拍子で強/弱を延々に繰り変えすので、ドンチャカドンチャカドンチャカドンチャカ…とリズム感が四拍子以上に分かりやすく目立つ)

 


やくしまるえつこ『ルル』(short ver.)HD

 

 囁くように歌う彼女のキャラクターと、アニメとのタイアップらしい合理的にオケで盛り上げて誰にでも聞きやすいキャッチーさのある曲の特徴を合わせた結果こういう風になったと思うんだけど、曲としては僕はこれが結構好きだ(アニメを見たことで個人的に主題歌に下駄を履かせて評価しているのもあるんだが…)

 


やくしまるえつこ『X次元へようこそ』MV (Short ver.)

 

 この楽曲はスペースダンディとのタイアップであり菅野よう子の編曲らしい。概形としてはクラブミュージック的な感じなんだろうか? 発想が奇抜で新しい世界を目指したというよりは既存のやくしまるえつこ的な表現の上にいろいろなものを積み込んだみたいな出来になっていると思うし、結果的に従来的なやくしまるえつこのイメージに近い楽曲になっていると思う。サビの「一次元 二次元 三次元」はとても特徴的な聞き心地がするし、流行りのアニメソング的な曲とのフォーマット的な違いもあるが、しょうもない表現を使えばスルメ曲的な部分はあるんじゃないかと思う。

 

※※※                                            ※※※

 

 相対性理論というユニットがどういう形態で活動をしているのかは僕はよく知らない。どうもシングルCD主体のアーティストとはだいぶ違うのは分かるんだが…やくしまるえつこ名義ではシングルを中心に出しているけれど、最近はそんなに頻繁には出ていない。ピングドラムと監督が同じとか作風がやや近いみたいな問題で何となくあるような気がしていたユリ熊嵐のタイアップはボンジュール鈴木が獲得したし、CDから音楽を聞こうとする人間としては出番がなかなかない事に寂しさもある。ただ来歴を見るにCDが出ないことが即問題という歌手ではないだろうし、そこら辺の1アニメファンとしては今後も気まぐれによさ気なタイアップを獲得して、音楽的に魅力のある曲をこれからも作って欲しいと願っている。

 

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