前回の川田まみの記事に太字の文章2箇所を加筆しました。内容としては、昔のような歌に戻ってきたことで最近のシングルではビブラートも戻ってきたという話です。
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この歌手は変わった経歴を持ちながらここまで来ている。クソゲーオブザイヤーで知られた初代から何と現在まで7年間に渡りシリーズ新作品を出して当ててきた戦極姫シリーズで、数えきれないほど主題歌を歌っていることから知っている人もいるかもしれない。歌手の名義が出てくる曲はざっと探してもそれしかないが、実はメジャー流通?したシングルも出ていたりする。実際堅実ながらCD映えしそうなキャラクターを持った歌い手がいるユニットだと思う。
ボーカル自体の持つ音楽性という意味ではアニソンの主流にとても近いところにいる他方で、良くも悪くもPCゲーム音楽的な無難さがある。歌い手としての潜在能力はとても感じるので、TRUEのUNISONIAとかみたいな、似たような傾向のメロディーと歌で尚且つインスト的にはチャラチャラしたところのある音楽も試しに聞きてみたいなと思ったりする。
戦極姫3~天下を切り裂く光と影~ オープニングムービー(発売前ver.)
(光舞-いかづち-)
(辰風-たつかぜ-)
楽曲をざっと見てみると、アニソン的なまとまった音楽、同人音楽的な思い切りのあるロック的なギターやベースに厚みのあるオケ、PCゲーム音楽的な音楽性の明確さというような微妙に違うところをいい具合に合わせてきたような内容の曲が多い。今までここで扱ったことがないようなメロディアスな楽曲ばかりだが、それがPCゲーム音楽に収まるのは、この歌い手がゲーム音楽界隈で熱唱する歌手としては比較的正しめの歌を歌うからだ。
あとどうでもいい話だが、SystemSoft AlphaがOPムービーとしてようつべに提供しているものの一部は最終的にマスタリングされた音源ではないんじゃないかと思う。(上と下でユニコーンエーのコンテンツを私は勝手に拝借しているわけだが、それもSystemSoft Alphaと会社は同じでブランドが違うだけなのでどうしてそういう差が生まれるのか分からない部分はある)。ここでは上げていないが特にシステムソフトアルファが公式PVとして提供している火群にはボーカルにハモリが入っていないのでボーカルが薄く聞こえやすい……非常に素敵な曲なので、機会があれば製品版を聞いてみてほしい。
歌い手としての特徴としては、ミックスで持っていくような歌い方はせず、かなり明確に地声で粘って、抜ける音はファルセットでという動きをしやすい。この歌い方だと喚声点付近で激しく動くと辛いものがあるかなという感じはする他方で、リズムへの収まり方を見ると整形の後があまり見られない非常に自然な音源が多い。
(凍星-いてぼし-)
インディーズとして活躍する実力のある歌手としてのハードルと、適当にCDを集めながら聞いている手軽な全国区的な視点を合わせて論じるなら、技術的に卓越しているとは言い難い部分があると思うが、非常に力のある声が歌になるので低音のダイナミックな曲を最大限ボーカル主体のものとしてとして聴かせることが出来、荘厳な楽曲が非常にアニソンらしく華やかにまとまる(特に地声をメインで使うので難解な世界になりづらいのは、歌手のキャラクターを定める上でとても大きい)。きっとどんな歌を歌ってもこんな感じの出来になるだろうと思うし、自分の世界がある分この歌を歌わせたら凄くいいものが出来るだろうというような想像を働かせる余地の非常に多い歌手でもある。
公式ブログで紹介されていた東方アレンジ楽曲も現にここで借りてきたのによく似た感じの楽曲になっていた。あれは非常に出来が良かったし、僕は東方アレンジは守備範囲ではないが、少なくとも東方アレンジで名をはせているような多くの歌い手よりはこういったことも上手くこなせそうだと思った(まあそこはきっと自分のタイアップを持ったプロとして住み分けているんだと思うので、外からなんやかんやいうことではないけれど…)。東方アレンジの特徴として、編曲者と原作の名前が有名になりやすくボーカリストはやや埋もれやすいという部分はあると思うけれど、少なくとも聞く立場からすればそういうのも全然悪い話ではないと思う。
(飛翼-つばさ-)
歌い手さんの歌われ方には僅かにだがフォーマルな指向性がある。ポップミュージック的にこなれた音楽の世界というよりメロディアスでクサさのあるメロディーラインで聴かせるようなアニソンロックの世界でとても力を活かせる歌手だし、インストにそこまで精通していない私が作曲家のめぐり合わせを語るのは難かもしれないけれど、この歌手にこの曲をかける作曲者がユニットを組んだ巡り合わせには感謝するばかりだ。
わりとインスト的に派手でダイナミックなものが求められる傾向にあるアニソンや同人音楽界隈を見ていると、こういった歌い手さんこそこれから求められつつある人材なのでは? という感じがする(そもそも別のもののプロであり活動範囲的にも同人音楽の領分ではないし、他方で声優音楽的な要素が薄いのは広い意味で言うアニソン的に辛いとは思うものの、それがなくてもアニソンとしてだめという話には決してならないし、そういった要素はボーカルという観点からではなく、楽曲から適当に付け加えることも出来ると思う)ので、特にCDなどの電子媒体で主に音楽を聞く人間としては是非今後も広く活動の機会を得て欲しいと思う。変幻自在のポップスという文句を使うこともあるらしいが、もし低音で聴かせるオケをベースにしてチャラいピアノやら弦やら電子音楽的な何かでインストに色を盛ってやれば、流行りの方が寧ろ近づいてきたところもありド真ん中付近のストレートっぽい何かが出来そうだし、まあこれからどうなるんであれこういう堅実さのある音楽は何をやっても今までやってきたことが無になるようなことはない。どう活躍してくのか分からないけれど、真っ当かつとても潜在能力のあるユニットだと思う。
その他の記事。
・歌手の話 西沢幸奏(吹雪、Bland-new World等) - 試しにアニソンを聞いてみる。