試しにアニソンを聞いてみる。

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やなぎなぎの記事の補足 ポピュラー音楽で聴かせるための裏声の使い方について

 

 直前のやなぎなぎの記事の趣旨をざっくりまとめれば、元々ファルセットの音域が使える歌手だったので、そこを活かす方法を模索していくうちに王道的なアニソンに戻っていったという話だった。

 supercellのころは高い音をファルセットで出していたが、やなぎなぎになってからは曲の中でここぞという位置でファルセットを使うようになった。そのここぞという場所というのが単なる高い音とどう違うのか、出来る範囲で説明しようと思う。

 わりと当たり前に思えることをドヤ顔で語っているだけの内容ですが、何かの参考になれば幸いです。

 

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 とりあえずどっかでさよならメモリーズを聞いて欲しい。


 まずサビに裏声で入ってからずっと裏声で歌っているのがわかると思う。サビ以前から全体的に声に裏声を混ぜているので、突然裏に行っても落差がないのと、地声の音域でもミックス気味に対応するので普通の地声と比べて音が弱いことから、結果的に弱い裏声が歌に馴染んでいる。


 nagiが歌っていた頃のsupercellは端的に言えばボカロ的な曲が多い。基本的に人間が歌うものとしてはやたらキーが高いし、何より歌の中でボーカリストが強弱をつけることが要求されていない、というより、強弱をつけないことがむしろ要求されている。

 どういうことかというと、普通歌は高い音ほどダイナミックに見せるもので、人体の仕組み上高い音は全体的に大きくならざるを得ないし、大きくならざるを得ない箇所があるなら反対に小さく歌う場所がないと歌に表情が付かないので、必然的に低い音で静かに聴かせて高い音で盛り上げる構成に殆どのボーカル曲はなる。

(人間というのは一本の管で、腹から送り出した息が声帯を通って口から出ることで声が出る。リコーダーみたいな管が喉の位置に逆さについていて、腹の方から息が入って口から出て行くことで音が出ていると思ってもらうのがわかりやすいと思う。力で声帯を細めるか、声帯を通過する息を速くすると管の振動数が上がり声が高くなるが、声帯は自由な方がいいので基本的には息を速くする方が汎用性が高いし、声楽や合唱みたいなフォーマルな歌の人たちが腹筋を鍛えるのはそのためだ。息が早いほうが音が高いのも、まあリコーダーの思い出でだいたいわかると思う)

 

 高い音を細く延々と歌わせる歌はある意味人体の構造をかなり無視していて、あの高さを「できるだけ平坦に」歌う必要があるので、すべての音にミックス気味に入って高くなるとすぐ裏に抜けていくような歌が使われた。つまりnagiはファルセットで歌を平たくしている。多分ボカロから作曲に入った人の曲でなければこういう発想にはならなかっただろうし、結果的にそこがアニソンを聞く人にウケたんだと思う。

 


11月7日発売やなぎなぎ「ラテラリティ」PV(90sec)

 

 ポップスの裏声は、高い音が地声で出ないから裏声になるという歌手の事情を解決し、裏返ることで歌が盛り上がるという曲の事情も同時に解決する。高い声が裏声でしか出ないのと裏声を使うと盛り上がるのは別の話だが、とりあえず裏声で歌えばそれが同時に起こる。サビを盛り上げるために高い音にする→裏声になる→声が裏返ってさらに盛り上がるというふうに勝手に利害が一致するからだ。


 しかしよく考えると、歌に表情をつけるために裏声を使うなら、その技術は歌手が仮に地声で歌える音域でも使っていいんじゃないかという話になる。歌手は地声が出る音域でも裏声を使うし、裏に行きたい音域でも地声を混ぜることがある。では曲の中でどういう時が、「地声が出るかもしれないけど裏声に行く」場合なのかというと、多くの場合はシンプルに低い音から高い音に飛ぶ時だ。前の音と次の音が音程的に離れていることを強調するには、地声から裏声に行くのが聞いていて一番わかり易い。あえて裏に行く必要のない高さでも裏に行くことによって歌手は、聞き手に対してメロディーがこんな作りなっていますよということを説明する事ができる。

 ただ低い音から高い音に飛ぶ時は大体飛んだ先の高い音は裏声じゃないと出ないことが多いので、結果的にそこが「裏声で歌う音程」になる。逆に裏声じゃなきゃ歌えない音は地声で歌いたくても裏声じゃなきゃ歌えないに決まっているので、作曲者は歌手が裏声にならざるをえない音域を使う場合は、わざと作曲の時点で低い音から高い音に飛ばすようにして辻褄を合わせる。つまり、この音は裏声じゃなきゃ出ないので仕方なく裏に行くという歌い方を歌手にさせないために、裏でないと出ない音は低いところから高いところに飛ばしてやる。こうすると、歌手が裏声にならざるをえないことが表現として裏声が使われることとイコールで結ばれる。技術と才能から自由に裏声と地声を行き来できる歌手を除いて、ポップスの歌というのは大抵こういった作りになっている。

 

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 まだ少し問題が残っている。supercell時代のnagiは高い音をある程度勝手に裏声にして歌っていたし、ここまで説明したのは、ポップスの歌手は地声で歌える音程に裏声を混ぜるということだ。しかしそれだと何で自然に裏声になる位置から裏で歌うより、わざと裏声を使うはずのやなぎなぎの方が喚声点が高くなっているの? ということを説明出来ない。単純に考えればやなぎなぎ名義の方が低いところから裏に入ってもいい。

 

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 簡単に言うと、やなぎなぎは高い音に地声を混ぜて裏に行かないように歌うことで、裏声に行きたい時だけ裏に行くという選択肢を作っている。nagi時代は低い音域からすっと裏に入ったので、逆に特徴的な音だけ選んで裏に行くということが出来なかった。出来るだけ地声で引っ張ろうとする歌い方がポップスの歌手っぽいのは、そうやって裏声でも歌える音域を地声で歌うことで、一言で言えば歌に表情をつけるからだ。(やなぎなぎの場合はわざとというより技術的な側面でそうなるという音源が多いためどこまでが作為なのかは微妙なところだし、ルールみたいなものを断言するのも違う部分はあるだろうが、少なくとももっともらしい言い方をすればそういうことになる。)

 フォーマルな歌の場合、喚声点は低いところにある場合が多い。nagiの歌がフォーマルだとは思わないが、nagiがやっていたように低い音から裏に入ることで、地声と裏声の境目はスムーズに繋げる。ただポップスの歌手としてはその方向性で売るのは難しい部分はあるだろう。それをすると良くも悪くも女子高生みたいな歌になる。

 因みにこの記事の内容は、やなぎなぎの発声を賞賛する内容ではなく相対的な違いの話をしているだけなので十分に注意して下さい。事務的な定型句としてではなく、ここまでして来た話は本当に発声の良し悪しではないですし、個人的には発声を研究するのにやなぎなぎはおすすめしないです。

 

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 粗い文章の糞記事なので申し訳ないけれど、気になることやおかしいと思うことがあればコメント欄に書いて置いて下さい。今回はここまでです。

 

 

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