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歌手の話 藍井エイル(シリウス,INNOCENCE,ラピスラズリなど)

※いろいろ四苦八苦していますが、開設からまだ一月ということでお許し下さい。
 
 藍井エイルは言うまでもなく名実ともに今のアニソンを代表する歌手だけれど、この歌手の音源には少し変わったところがある。CDになるようなものはだいたい綺麗に直されてしまっているのが普通なんだけど、藍井エイルのCDは全体的にボーカルとして逸脱してしまった部分を、一箇所や二箇所ではなく大量に残してあることが多い。これは恐らく意図的にそうなっていて、流れはギリギリで繋がっているぐらいに聞こえるんだけどメロディーには収まっているし、それが彼女の歌手としての表現になっている。聞くほどに理解が深まっていく歌手だ。
 歌は音程とリズムだけでは語り尽くせないが、そうは言ってもピッチとリズムで歌を聞いている人は多いと思うし、その意味でそういう逸脱した部分が最もわかり易いのはサンビカのAメロ部分かなと思う。
 
 まあ直されていないとは言っても、やや古めの曲の中でもシリウスは相当変えてあるように聞こえるし、IGNITEあたりからは大体整ったものが出て来ている。
 
 藍井エイルのキャラクターだと、実は極端に難しい歌には挑戦する必要が無いということも重要なポイントだ。一見不可解に聞こえるかもしれないが、そもそも音楽的には聴かせるためのノウハウがないから難しい物をやる必要があるわけで、素材が有るなら難しいものに挑む必要なんて無い。
 実際曲を聞く限りではどれもボーカル的に余裕をもたせている。もっとわかりやすい言い方をすればどれも藍井エイルにのびのびと歌わせるような曲になっている。表現を見つつ、全体として平坦にならないように局所的に難所を入れるといったような、ポピュラーミュージックとしての歌い手のよさを活かした合理的な作りの曲が多い。もっと端的に言えば、歌だけでなく曲からも表現を聴かせるJPOP的な性格が色濃く出ている。
 
 多くのアニメソングは表現を見せるというより難しい曲に収めることによって歌い手の力を示すような方向に進化してきたので藍井エイルのようなキャラクターはある意味では独特だが、今となってみれば独特どころか明らかにアニソンを代表するような雰囲気を持っているし、最近は綾野ましろといいJPOPらしさの範囲で少し固有の表現を持っている歌手が好まれる傾向があると思う。今後そうした歌手が増えてくるとしたら、藍井エイルはその先駆け的な存在だといえるだろう。


 
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藍井エイル 『シリウス(Music Video)-Short ver.-』

 
 代表曲はたぶんINNOCENCEかIGNITEあたりじゃないかと思うんだけど、音源としてのわかりやすさではシリウスは特徴的だ。音程にもリズムにもアニソンとしては幅があり自由に曲に乗れるような余地がある分、メロディー的にもオケ的にも装飾が少ないので歌うだけなら浮いた曲になってしまう。言ってみれば凄く藍井エイル的な楽曲だ。

 

 


藍井エイル 『ラピスラズリ』Music Video

 
 ラピスラズリは発声が基本に忠実だ。恐らくはCDにするにあたってエンジニアリング的に少し表現を抑えて技術をブートしたこととの兼ね合いからだろうと思うけれど、それが結果的にダイナミックな仕上がりになっている。基本的には表現は曲の中で技術が伴わないと窮屈になってしまう部分があるし、少なくともこれはそういう側面を持つ、ド直球故にメロディーには乗せられても自然に聴かせるのが難しい楽曲だ。
 ラピスラズリとシューゲイザーの2つは良くも悪くも整っていてオリコンチャートの上位常連という感じの女性歌手のイメージにぐっと接近していったシングルだと思うし、傍から見ている限りでは徐々にこの方向性に寄せていく方が歌手として出来ることの幅は広がるんじゃないかなと思う。まあそれは個人としての勝手な見解ではあるけれど、何はともあれ、これが藍井エイルだというような一貫したキャラクターと識別性を確立しながら、短期間でこれだけ違うものを出して来れたのも藍井エイルという素材が際立っていたからだろう。

  ところで藍井エイルの歌は生まれ持った声と、ロングトーンで僅かに音程の震えが発生することで歌がダイナミックに聞こえるところが評価されていると思うが、音楽的に正しく聞こえやすいのは恐らく先頭の音が正確に取られる傾向が強いからだ。そこを抑えておけば、歌は非常にシンプルになるのだ。


 
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 藍井エイルという歌手が出てきたことの影響は簡単には語り尽くせない。ポップス的なスタイルからヒットを出してライブでも稼ぐというスタイルを確立させたことは、鈴木このみや綾野ましろやGARNiDELiAや西沢幸奏のような歌手が出てくる上でなくてはならないことだったはずだし、現に藍井エイルはアニソンらしくもありポップスらしくもあるという部分を両立させて新しいタイプの歌手になったことによって今がある。
 今後アニメソングがどう変化していき、その中で藍井エイルがどのような立ち位置の歌手になっていくかは先の長い話なのでわからない部分があるが、既に普通の感覚からすれば十分過ぎる程の地位を得ることに成功しているじゃないかという以上に気になるのは、これだけ暴れてもデビューからまだ4年というコンテンツとしての若さだ。これはまだ藍井エイルというコンテンツを発展させていく中で変化の余地も残されているということで、今の時点で方向性はある程度定まっているし盤石と言えるような部分もあるものの、まだこの先に未知数の可能性を秘めていることは考慮されてもいい。

 

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