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試しにアニソンを聞いてみる。

ボーカルの視点から音楽を聞いてみる。暫く休みつつ、過去の記事を地味に校正したりしてます/ページ下部でカウンター稼働中。たまに見てみて下さい/・歌手の話まとめ→goo.gl/JiZPgQ/コンテンツの使用などに関して問題があれば撤去しますのでお伝え下さい。ご連絡はhttps://twitter.com/yfyamvまで

歌手の話 西沢幸奏(吹雪、Bland-new World等)

アニソン アニソン-歌い手の話

 僕が西沢幸奏の歌を初めて聞いたのはアニメ艦これを観ていた時だ。とりあえずこんな歌を歌える人が出てきたんだなと思ったけれど、ファーストインプレッションではなんというか吹雪は非常に無難な曲だった。後でライブ音源で聞いてみてそんなことはなかったと思い返したけれど、艦これのエンディングとして自然過ぎる以上にあの曲はCDで綺麗に収まりすぎだと思う。
 

 


TVアニメ「艦隊これくしょん -艦これ-」EDテーマ『吹雪』/西沢幸奏(にしざわしえな) MUSIC VIDEO

 

 
 吹雪はなんというかオーソドックスなロックだ。というのもちょっと変なんだけどそうとしか表現しようがない。僕の知る限りではリズムに特徴もなく、バックでひときわ目立っている管弦もJPOPとして理解できなくない割にアニソンの範疇にも収まっている。DTM的なちゃらちゃらしさともよくあるようなオーケストラルなカラフルさとも少し違う気がするし、しいて言うならボーカル的にだけ見ればロックとして非常にシンプルな曲だ。これは単純に、属性の少ないシンプルな曲ほど聴かせるためのハードルが上がるので、出来る人が少なくて似たような売られ方をする歌手がいないということだ。
 

 


西沢幸奏/Brand-new World Music Video(2chorus)_TVアニメ「学戦都市アスタリスク」オープニングテーマ

 

 

 吹雪以外の曲はどれももっとJPOPに近いロックだ。これも技術がある分それを見せびらかさなくてもオーソドックスな歌が様になっていると言える。わかりやすく技術を曲の個性で見せていくアニメソング的な表現とはある意味逆を行くが、明確に滑舌を取る歌い方や歌声には非常にポピュラー的ならしさがあるのであまりアニソンとして浮いているような印象は与えない。この点に関して言えばアニソン歌手としていくら評価されてもされすぎということはないだろう。
 
 面白いのはデビューシングルの吹雪を出した時点でアニサマに登場し、シングル2本目が出た段階で単独イベントが決まっているところだ。今のところCDとライブDVD音源と思われる録画放送しか見ていないので絶対とは言えないけれど、確かにどう見てもものすごく歌えそうな歌手で、ちょっとしたライブパフォーマンスに余裕すら出ていたと思う。他の畑から連れてきた歌手ならともかく、アニソンでデビューした歌手がシングル一枚でライブを制しているんだからえらいことだ、というと言い過ぎかもしれないけれど(そもそも現地で聞いていたわけではないしね)。
 ただ、とりあえず分かるのはフライング・ドッグはこの歌い手に相当な期待をしているということだ。綺麗な独自ドメインの公式HPもあってラジオまでやっているし、更に言えばライブを含めたイベントから売っていこうという姿勢が感じられる。歌手がトークイベントだけしていても話にならないし、名前を売るためにCD以外からのアプローチが出来るのは実力がある歌手で、更に言えばその実力を積極的に生かすような動きをレーベルにさせるのは並外れたことなのだ。そしてこれは長いこと言及するのを忘れて放置していたので密かに書き加えておくのだけど、誰がやっても成功が確証されている艦これというコンテンツに西沢幸奏のデビューシングルを投入してきたとあれば、ここまでの主張にも多少は説得力が付くと思う。
 
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 ただ今の段階で出ている曲からは、レーベルは余りアニソン的なものを歌わせる気がないんだなあという感じもする。往々にしてポピュラーはうまい歌手を持て余すもので、技術がある歌手の技術を活かそうとすると「正統派」とでも言うような曲しか出てこないのはよくあることだ。
 一方でアニソンを聞くなら斬新さやきらびやかさみたいなものを何処かで求めているフシが聞き手にはあるだろうなと僕は感じる。分島花音が本当に歌えんのかと言いたくなるような曲を使い、AKINOが日本語でないような歌を歌うように、ポップスの中で技術をわかりやすく出すのには何かが必要だ。人はわかりやすさがないと歌を聞いてくれないし、特に技術のある歌手は技術を(言い方は悪いが)誰にでも分かるように見せつけないといけないのが、よくも悪くもアニメソングの特徴だ。正当にうまい歌手に妥当な歌がついて評価されるわけではないのだ。
 
 マーケティング的な意味で言えば既存の歌手で西沢幸奏に近いのは藍井エイルかなと思う。JPOPから引き抜いてきたかのようなキャラクター性があって、そういうさりげなく洗練されているんだけどアニソンとしてもわかりやすいメロディアスなロックを主題歌にするのがオシャレという雰囲気が最近のアニメにはあるんじゃないかと僕は勝手に思っているんだけど、その意味では西沢幸奏はJPOPらしさとアニソンらしさを兼ねるというこれ以上ないほどの逸材だと思うし、レーベルが力を入れないわけがないとも思う。活動の軸がライブになる可能性が高いことも考えれば商業的な意味ではそれなりに相似性はあるだろう。
 けれどボーカリストとして似ているかというとそれは意外と微妙だ。端的に言えば西沢幸奏はかなり上手いので、その分他の歌手よりも歌としての本格的さとアニソンとしての柔らかさのバランスを両立できるポイントを探すのには苦労するだろうと思う。自然とこうなったという曲では西沢幸奏の技術はアニソンとしては硬いのだ。吹雪はある意味それらが艦これという世界観を借りて両立できるタイアップだったし、後になって考えてみればあれはあの役に西沢幸奏が収まったというより彼女にしか出来ない仕事だったんじゃないかと思う。
 
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 技術というのは、色々な歌い手がいろいろな方向を向いているものを同じ方に向かせるような部分があり、技術が付くほどに表面的なテクニックで「自分である」ことを表現するのは返って難しくなる。つまり歌の中で自分であることを証明していくのに工夫が必要になってくるのだ。そしてその手垢にまみれた表現でいう個性というやつは、「どう歌うか」と「何を歌うか」で構成されるが、彼女の歌い手としての技術はCDを聞く限りかなり確立されている。どこが目標なのかもなんとなく想像がつくし彼女の生まれ持ったものとも上手く折り合いが付いているし、何より西沢幸奏という歌い手のキャラクターは既に相当聞き手の中で定まっているんじゃないかと思う。だから僕は曲からのアプローチをしてみてほしいと思う。
 ロックとしてはAKINOやangelaやMay'nやアニソン的には分島花音のようならしさがある曲に、人として「立ち向かって」行く側面を見せる歌が一つや二つでもあればそれを聞いた人はその視点から他の曲を聞いてくれるだろうし、何より単純な技術が評価されづらいアニソンの世界ではそういう、表現の中に明らかな厳しさや特徴のある曲が、技術のあり息の長いアニソン歌手という枠の定番にならざるを得ない部分があるからだ。極端なことを言えば綺麗なロックを綺麗に歌っても綺麗だねで終わってしまうし、アニソンとしての完成度はこの歌手にこの歌を歌わせるのかという難易度のギャップから来る部分すらある。然るに西沢幸奏のような器用で上手な歌手にとっての難しい歌というものがどういうものなのか、いまいちピンとこない部分もあるだろうし、そこが彼女の歌がどうしてもJPOP寄りの仕上がりになりやすい理由の一つなんじゃないかと思う。上手いというのも悩ましいことなのだ。
 ただ、こうした歌手が出てくる事自体もアニソンを取り巻く環境の変化から来るものだと思うし、西沢幸奏はいずれはその時流を象徴するような歌手として広く認められるどころか、やり方によっては別の側面をアニメソングにもたらしてくれるのではないかと僕はとても期待している。ついでに言えばちょっとはアニメソング的な派手派手しい歌も聞いてみたいなと聞き手の分際で思ったりする。
 
 

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・吹雪

管弦など使われている楽器の編成が少し珍しい以外の点ではシンプルにロックだといえるだろう。ボーカル的にも歌に収める点では難しさはないけれど、勇ましさの表現がとても西沢幸奏のキャラクターに合致していて大変明快な歌だ。

吹雪

吹雪

  • 西沢幸奏
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

・Brand-new World

JPOP的なんだけれど、JPOPだと思うと非常にカラフルだしリズム隊の見せ方にもやや電子音楽的な個性があると思う。アニメソングとしての魅力もいろいろあるだろうけれど、余りに難なく歌いすぎてキャッチーというより高尚な音楽になっているところはあるだろう。

Brand-new World

Brand-new World

  • 西沢幸奏
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

・ピアチェーレ

しっとりとしていて聞き心地のよい曲。ポップスは基本的に遅いほどまともに聴かせるのは難しいので、曲中でボーカル的な一貫性が保たれていて、生でもこんな感じなんだろうというような自然な音源が出来ていることは単純に評価されてもいい。

ピアチェーレ

ピアチェーレ

  • 西沢幸奏
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes